そばにいさせて~クールなあなたとのセカンドストーリー⭐番外編追加⭐
彼と会うのは二週間ぶり。

きっとまた憮然とした無表情で現れるに違いない。

そしてクールな目で私を一瞥し、この間のことなんか忘れてしまっているような態度で接するのかな。

いちいちもらった手紙に反応するなんてこともなく。

ふぅ。

そりゃそうだよね。

よくよく考えたら私なんか同じ目線で話をさせてもらえるような立場ではないもの。

一緒の部屋で泊まらせてもらったことも、夢みたいなことで。

いや、いっそのこと夢にしてしまった方がいいのかもしれない。

彼は東條物産の御曹司で、ハピーオフィスの社長。
そして、今やビジネス界では若手一番の注目株。

この間もビジネス雑誌に特集組まれてたって、香織が教えてくれたっけ。

夢にするんだったら、あんな手紙書かなきゃよかった。

会場の中央に、恐らくGMが座るであろう席とそれを取り囲むように並べられた私たちの座席をぼんやりと眺めながら大きなため息を一つついた。

「岩倉さん」

声のする方に顔を向けると、柳本さんが目を細めて立っていた。

壁にもたれていた上体を慌てて起こし頭を下げる。

「あ、柳本さん。すっかりご無沙汰しています。先日のお礼も出来ていない上に、あの日は色々とご迷惑おかけしてすみませんでした」

柳本さんともあれ以来だ。
時々、ハピーオフィスには行ってたけれど見かけることはなかった。

きっと忙しくしていたんだろう。

濃紺の質のいいスーツを身に纏った彼を見ながら、相変わらず清潔感があり聡明な涼しげな目元は香織が一瞬で心を奪われてもしょうがないと、あらためて納得する。

「いえ、こちらこそこの間は飲ませすぎて申し訳ありませんでした。あの後、大丈夫でしたか?」

柳本さんは心配そうな目で私の方に近づいてきた。

そういえば。

柳本さんはどこまでGMから話を聞いてるんだろう。

あまり迂闊なことは言えないような気がして、黙ったまま曖昧な笑顔で頷いた。






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