「私だって、臣は私のことただの幼馴染だとしか思ってないと思ってたよ」
「まぁ少し前までは自分でもそう思ってた。でもさ、水曜日の約束だって実は皆勤賞なの知ってた? 台風だろうが、体調が悪かろうが、絶対その約束だけは守りたくて、定時であがれるよう必死に仕事を終わらせて、必ず美麗の家に行った。美麗の飯が食いたいのはもちろんだけど、誰の目も気にせず二人で過ごせる唯一の時間を、俺は待ち遠しく思っていたんだよ。今思うと自分で気が付いていなかっただけで、俺はずっと美麗のことが好きだったんだろうな」
「臣……」
「俺達、もしかしてすげぇ遠回りしちゃった?」

夕日を顔に受ける臣が、苦笑いしながら呟く。

「美麗、俺さ、ずっとしてみたかったことがあるんだけどいい?」

すぐいつもの爽やかさを取り戻した臣が、まるでおねだりするように言う。

「してみたかったことって?」
「手、出して」

そう言われおずおずと手を差し出すと、臣が私の手をぎゅっと優しく握りしめた。

「美麗と堂々とこうやって手を繋いで歩いてみたかった」
「臣……」
「何やってるんだろうな、俺達」

そう言ってクスクスと笑う臣は嬉しそうで、その顔を見るだけで胸がいっぱいになった。

散々遠回りしてしまったけど、長年もつれていた糸は20年の時を経て今大好きな臣のもとへと結び付けてくれた。幸せすぎて、また泣きたくなった。

「もしかして手つなぐの遠足以来?」
「そうかもしれないね」

顔を合わせ笑い合う。もうどんなことがあっても昔のようなネガティブな自分には戻らない。自分に自信を持って堂々と臣の隣を歩いて行きたい。そう誓いを立てながら、私たちの足は自然と自宅へと向かっていた。