不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
3.本家と分家の格差婚



中華料理って好き。
大皿でばんばん出てくるのを回るテーブルをくるくるさせながら家族でつつくのも楽しい。コース料理で一品一品華やかで繊細な盛り付けで出てくるのもいい。
今日はコース料理で、私の好きな広東風のお料理がメインなんだけど、ただいま私は憮然と卓についている。憮然っていうのは心もちのこと。実際は、穏やかな笑顔を顔面に貼りつけておとなしく座っているんだけれど。

「豪、翠嬢へ贈り物はしたのか?もうそれなりの給金はもらっているのだろう?」

私の正面には大柄な老齢の男性。この人こそ、現斎賀家当主である斎賀武蔵だ。つまりは豪のおじいさまにあたる。現在80歳。しかし、見た目はどう見ても10歳は若く見える。がっしりした身体つきと、白い髪と髭は貫禄と威厳を感じさせる。

「そうですね、いずれ」

私の横で答えたのは豪だ。その向こうにいるのは特務局局長の猛さん。

「悠長なことを言っていると愛想を尽かされるぞ。翠嬢は美しいのだからな。妻にはこまめに贈り物をし、喜ばせてやるのが寛容だ」

おじいさまが笑顔すら挟まずに言う。
美しいって褒め言葉だけいただいておくけれど、私は帰りたい気持ちでいっぱいだった。

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