ラヴ・ミー・テンダー
第１部＊ラヴ・ミー・テンダー

１・２度としないわ、恋なんか

「ごめん、やっぱり無理だわ」

目の前の男はそんなことを言った。

「えっ…？」

何を言われたのか私はよくわからなかった。

「“無理”って、何が無理なの？

私、何か気に障るようなことをした？」

そう聞いた私に、彼はやれやれと言うように息を吐いた。

どうして息を吐かれたのか、全くと言っていいほどにわからない。

「そんなことを言っている訳じゃないんだ。

だけど…もし君と結婚して、これから先の生活を続けられるかどうかと聞かれたらピンとこないんだ。

事実、君は仕事柄常に家にいるようなものだ。

そこそこの収入があることだってもちろん知っている、でも…」

彼はそこで言葉を区切ると、
「君とこれから先もずっと一緒にいたいのかどうかと聞かれたら正直に答えられないんだ」
と、言った。
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