エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
美人姉妹とエメラルド
  レイリル王国に古くからその名を刻んでいる、歴史あるブラッドリー侯爵家には、美しいと評判の姉妹がいる。
姉のシンディは十八歳。すらりとして背が高く、姿勢がいいので気品がある。陶器のように白い肌に、宝石のような青の瞳。背中まである金髪が太陽の光を取り込んで彼女を輝かせている。
社交界でも一番の人気で、求婚してくる貴族は後を絶たず、引く手あまたの状態だが、なぜか彼女の縁談は決まっていない。

妹のベリルは十七歳。こちらも顔の造作は美しいが、おとなしくうつむいていることが多いせいか、社交界での人気はあまりない。姉よりも低い身長、瞳の大きさの割に小さなおちょぼ口、ややくすんだ金髪。
姉と比べられることが多い彼女は、自分自身も『姉に比べれば……』が口癖になるほど、コンプレックスを持っていた。
姉妹を比べる視線はベリルから快活さを奪っていく。表情に華やかさがなければ、当然魅力は激減するものだ。美人姉妹と評判なのにも関わらず、男性からの人気は姉の方に一極集中していた。

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