エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
あの日、王子に起きたこと

 一刻も早く真相が聞きたいと思っているのに、コネリーは「バートも呼んできます」ともう一度出て行ってしまった。
その間、ベリルとローガンは顔を見合わせたまま、黙っていた。
聞きたいことはたくさんあるが、説明は一度にまとめたほうが混乱も誤解も少ない。
ローガンも話し出さないところを見ると、同じように考えているのだろう。

ベリルは改めてローガンを見つめた。
今日は以前とは違い、こざっぱりとした服装だ。黒のシャツと同色のズボン。腰ベルトがアクセントになっている。髪は黒に近い深緑色で、肌の色も黒っぽいので全体的に影のような印象がある。容姿は少しも王妃様には似ていない。
ベリルからの視線に、彼は口もとを軽く緩めた。目つきが鋭いので口もとを引き締めていれば怖い印象もあるが、笑顔は穏やかで、内面の柔らかい気質を感じさせる。
ベリルはホッとして、微笑みを返した。

「……君がベリル殿だったなんて。俺の直感も間違ってなかったということかな」

彼の小さなつぶやきに「どういう意味ですか」と問いかけようとしたのと同時に、コネリーが戻ってくる。

「お待たせしました。連れてきましたよ」

彼の後ろにはもうひとり男がいる。大きな体で、筋骨隆々といった感じの男性だ。

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