平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
第二章
 人の気配で桜子は目を開け、瞬時、ビクッと身体を跳ねさせて起き上がった。
 
 というのも、寝台の端に腰をかけ、桜子を覗き込むようにしてあの麗しい青年がいたからだ。

「そんなに乱暴に起きてはいけない」

 超絶美形に、無防備な寝顔を診られたことが恥ずかしい桜子は困惑した。

「肩の痛みは? カリスタはひどい痣だと言っていたが?」

 桜子はディオンの優しい口調に、脳内変換が都合いいように変えているのではないかと、固まってすぐに返事が出来ない。

 ディオンは形のいい唇を緩ませて、桜子を見つめている。

「あ、あなたは……」

 周りの者がかしずいているこの青年が、最高位であることはわかる。

「ああ……紹介が遅れたな。私はこの国の第三皇子、ディオン・アシュアン・ベルタッジア」
「こ、この国の皇子さまっ!?」

 桜子は目を真ん丸くして驚いた。

(皇子さまって、小説やテレビでしか……)

「ディオンと呼んでいい。そなたの名前は?」
「鈴木桜子です」
「スズキサクラコ?」

 ディオンの発音が棒読みでおかしく、桜子は小さく微笑む。

(桜子は言いずらいかな……)

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