エリート御曹司は獣でした
憧れでとどめていたのに
◇◇◇

今日は月曜日。

事業部の窓を見れば、外はすっかり暗くなり、周囲には定時で退社しようと帰り支度を始めている社員もいる。

私もコートを羽織り、紺色のショルダーバッグを肩にかけたところだが、まだ帰れない。

「相田さん、行くよ」と私に声をかけたのは、久瀬さんだ。

斜め向かいの席の彼も外出する姿で、ドアに向けて歩きだした。


私たちがどこへ行こうとしているのかというと、望月フーズである。

一昨日、私のミスで特殊合成紙の販売価格を誤って顧客に提示したことを、久瀬さんに報告した。

土曜は休日出勤して、久瀬さんの指導のもとでプランニングし直し、今日は午前中に望月フーズの担当者に電話連絡して、謝罪と訂正に伺いたい旨を伝えた。

すると今日中に会ってくれるというありがたい返事をいただけたのだが、指定されたのは十八時という遅い時間。

正直、帰りたいという気持ちは消せないけれど、全て私が悪いので、それを心の中にしまい込んだ。

先方にも、謝罪に同行してくれる久瀬さんにも、お礼を言わねばならない立場であるのは重々承知している。

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