恋の神様に受験合格祈願をしたら?

【side:日向にこ】

 受験の翌日。
 我が家にお菓子とジュース持参で尋問に来た親友2人に、受験のお守りの正体が『恋愛のお守り』なことだけ内緒にして、すべてを話した。
 すると、リカちゃんからは、
「バッカじゃないの? なんで名前と学年を訊いておかないの。あんなイケメンとお近づきになれるチャンス、早々巡ってこないよ」
 と、合格前提で叱られた。
 ハルちゃんからは、
「ニコらしすぎるわ。そんなことなら、ニコの遠慮を無視してウチの車に乗せていけばよかった。なかなか教室に現れないから、心配しすぎて英単語の復習が途中でとまったアタシの気持ちがわかる? 受験という非常事態のときは、イケメンより自分の心配をしなさい。アタシが受験に落ちたら、全部ニコのせいだからね。ニコの泣いて真っ赤になった目のせいで、あのイケメンに何かされたんじゃないかって、受験中も心配して全然集中できなかったんだから」
 と、責められた。
「合格発表は3人一緒に行くわよ。ウチはワゴンだから保護1名ずつで6人乗れるし、遠慮は許さないんだから」
 ハルちゃんの『断ったら頷くまで追いかける』のオーラに、私は圧されながら「はい」と答えた。
 リカちゃんは「今、母さんに了解とるね」と、ポシェットからスマホを取りだした。

 そうして、受験発表当日。
 掲示板を見上げて、無事に3人揃って合格したのを確認すると、私たちは抱きあった。
 そして、お母さんたちからは頭を撫でられた。
 喜び一杯で合格者説明会の受付テントに向かうと、折り畳みの長机2台に、学生のイケメンと美女の受付係が5人並んで座っていた。
 私はその華やかさとオーラに圧倒されながら、メガネをかけた色っぽい美人な女子生徒の前に立った。
「合格、おめでとうございます。こちらは普通科合格者の受付になります。こちらの名簿には、受験番号順に合格者の名前が記載されています。まず、ご自身のお名前にチェックをお願いします」
 言われるまま、私は名簿の紙を捲り、自分の名前にチェックを入れた。
 大きな仕事を終えたような満足を感じながら、顔をあげた。
 すると、美人さんが驚いた顔で私を見つめていた。
 私の顔になにかついているのかな?
 私は首を傾げた。
「ついに来たか」
 美人さんの隣に座っていたガタイのいいスッキリなお兄さんが、楽しそうに美人さんへと身をよせた。そして、私と名簿を交互に見やった。
「あれか」
「らしいな」
 他の受付の人たちも、チラッと私を見た。
 そして、頷きあう。
 あの、私、何かしましたか?
 受付係の視線や頷きの意味がわからなくて、注目されるのが苦手な私はビクビクした。
< 12 / 116 >

この作品をシェア

pagetop