たぶんこれを、初恋と呼ぶ
再会






「え、俺がですか?」


 そこそこの中小企業に入社して7年目。

そこそこの大学の理工学部を卒業後、この会社の研究員として勤めてきた。


そして今回、入社当初から絶対やりたくねーと思っていた仕事を言い渡された。


「そう。今年から、MSMさんは安尾が担当な。よろしく。詳しい事は岩田から引き継いでくれ」


部長の言葉に、その隣に座っているアツシさんが、ニヤッと笑った。

アツシさんも相当長く担当してたんだっけ。いつも愚痴を聞かされてたな、そりゃ担当が変更となれば嬉しいに決まってる。


でも、研究員はまだ他にもいる中で何故俺。一番適してないと思うのだが。


「安尾には期待してるんだぞ。研究開発部のメンバーとして着々と経験を積んできて、成果も出してくれている。7年目だろう、そろそろ次のステップにも挑戦して更に経験を積んで欲しくてね。研究員が自ら表に出て営業に携わる事で、また新しい発見もあるだろう」

「でも俺には向いていないかと…」

「そんな顔すんなよ、安尾。俺だって向いてないと思いながら何とか前回やったんだ。結果いい経験になったと感じるし、評価もしてもらったし。安尾なら大丈夫だ」


いい経験ってアツシさん、担当だった時はあれだけ愚痴を吐いていたくせにどの口が言うんだ…。

しかし会社に勤めている以上、上司の命令には逆らえない。



「わかりました…尽力します…」


一体何年続くんだろう。

アツシさんはMSMさんが設立してから前回まで3回、年数にすると7年担当していた。

俺は何回担当するのだろうか。余程の事をしない限り、この案件を淡々とこなせばそれなりに評価がもらえ昇進対象になると聞いてはいるが…なんせ仕事相手がなあ。



終わった、俺の未来。



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