本当に優しいのは、君でした。(短)
1、泣かないと決めた日

一人じゃないーー、君達がいるから。

梅雨が明け、暑くなる初夏。

何も変わらない日が過ぎ去るーー筈だった。

ガラリと焦った様に、教室のドアが開いた。
「佐々木 舞さん、居るか!
今、親御さんが交通事故でーー!!」



そう、それはーー幼なじみの舞に残酷な現実で。

舞の両親が、交通事故で死んだと言う知らせだった。


舞に視線を送れば、ただ呆然とーーただ何も言わず、カバンに教科書を詰め込む舞。

取り乱す訳でもない、、
泣く訳でもない、、

舞ーーーー?


「感情薄くない?もっと泣くとかさあ」

誰のモノか、分からない声が聞こえた。

「なんで、泣くの?
私は、泣かない」


舞の言葉に、騒いでいたクラスメイトも静かになる。

「早退します」


それは、とてもクールな響き。

君が、すり抜けた。
俺なんか、一度も見ずに舞は教室を出て行く。

「先生、舞が心配なんで早退します!
失礼します!」

カバンを抱え、教室を出ようとした俺に。


「ちゃんと支えてやれ。
出席にしとくから」


先生は、呼び止めた。
それは、とても優しい言葉で、、泣きたくなった。



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