本当に優しいのは、君でした。(短)

最後の別れ、だけど私は泣かない。

着いたマンション。
変わらない日常の生活になる筈だった。

父親の歯磨きは、何も変わらず横には母親の歯ブラシが並んである。

無言で二つの歯ブラシを掴むと、無作法にゴミ箱に入れた。

「ちょっ、何してんだよ!」
言わずにはいられない。

そんな簡単に、無かったことにして捨てられる舞が
俺は、信じられない。


「まいちゃん、すてちゃダメっママのだよ?」

何も、わからない妹。

「もう居ないの。

ママも、パパもーーもう居ないの」


なあ、舞。
残酷だよ、そんなの。

「もういない?」


ダメだよ、舞。

「うん、ママとパパはねーーーー死んじゃったの」



2歳の子には、理解出来ないかも知れない。

それでも、酷だよ。

なあ、舞。


お前、変わったな。


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