ただ、只、模範的な日常。

第3話ー不測の事態ー

その時私は、スポーツテストのシャトルランの為に体育館へと移動をしていた。
『ドスッ!』
『あ…』
気付くと腕にボールが当たっていた。
すると、一人の同級生位の男子が駆け寄ってきて、
『大丈夫ですか?』
と、声を掛けてきた。
『大丈夫です。あ、ボール。どうぞ。』
と、取り敢えず当たったボールを渡す。
『すみませんでした。あ、腕のお詫びに今度何かさせて下さい!』
と、言われたが、何だか少しだけ嫌な予感がしたので、
『大丈夫です。では、さようなら。』
と、一礼して、体育館へと移動した。

それを見ていた人が一人居た。
それは、長い髪の女だった。
『何なのよ…あの女…』
そう言いながら、長い髪の女は爪を噛んだ。
『女狐が…許さない…』

それは、この日から数日後の事だった。

帰ろうと私は自分の下駄箱の前に立った。
すると、『お前!!』と、
気が強そうな女子の声が響いた。
どう考えても、今日は用事で居残りをしていた私以外、誰も下駄箱には居ない筈だ。
つまりこの人が言う“お前”とは私の事だ。
『何でしょうか?』と、
知らない人なので誰にでも使うような作り物の笑顔で返す。
『何でしょうじゃねぇー!私の彼氏に手ぇ出しあがって!!』
目の前のギャルっぽい髪の長い女子は本当に怒っているようだった。
『あの…身に覚えが無いのですが…?』
しかし、本当に、全くもって身に覚えが無かった。
『あぁ!?なめてんのか!!それなら、こっちも好きにさせてもらうよ!!』
その瞬間。
目の前の女子は勢い良く手を振り上げて
『バシッ!』
私を殴った。
『ドスッ!』
その直ぐ後に蹴った。
でも、自分が悪い。
身に覚えが無いとしても、彼女を嫌な気持ちにして、怒らせた張本人は私だ。
彼女、本人に処罰を受けているだけだ。

いや、今思えば、怖かったのかも知れない。
勿論、助けてほしいと思うような事が、無かったわけでは無かった。
そして、助けてほしいと、誰にどうやって伝えれば良いかなんて、この時の私には分からなかった。
何故なら、助けてほしい何て、今まで言わせて貰えなかったから。
言う力すら持っていなかったから。
助けてくれるような相手が、いなかったから。
何て、思ったけれど、彼は助けてくれた。
こんな私を。
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