月杜物語
うとうと
【うとうと】

春の陽気になれば眠気を感じるもので。

あたしはレールバスに乗っていた。
排熱を利用した暖房が効いている。

茶色のセーター、植物繊維を集積をした、白く染色されたコート、茶色に染色されたズボン。安全靴を兼ねた硬い木製のスニーカー。ラジオ(受信機)を取り付けたヘッドフォン。

レールバスはダクト内部をゆるやかに低速ですすむ。

旧区画から新区画に入る。

うとうと。
暖房だ。低い音程のかすかなモーター音。
シティのラジオの時報がヘッドフォンから流れた。
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