恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

陽子を引き合いに出したが、もしもひとりで病院から帰るとしても、一樹に来てもらいはしなかっただろう。


『おばあちゃんの容態は?』
「目を覚まして、今は安定しています」
『それはよかった。俺の父も言っていたけど、アブレーションはやった方がいいと思う』


それは帰り際に久城にも再三にわたって言われたことだった。
でも多香子は、それを拒んでいる。カテーテルだから負担が少ないと説明しても、痛い思いをするのはもう嫌だと。

開胸手術で怖く痛い思いをしたのは、梓にもよくわかる。その後のリハビリが大変だったのも。
でも、このままなにもせずにいれば、また昨夜のように気を失ったりするのではないかと、梓は不安でならなかった。


「それはわかってはいるのですが、祖母は拒絶していて……。それで、実は……一樹さんにお願いしたいことがあるんです」


梓が静かに切りだす。


『なに?』


それはひと晩悩みに悩んで、梓が導き出した解決策だった。

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