卒業します

フィアンセ

「春人さん、ありがとうございました。
ゆっくり休んで下さいね。」

3日間のお礼を言って、車から降りようとする私の肩を引いて

もう一度助手席に留めようとする春人さん。

「危ない……………なぁ………」

文句を言おうと振り返る私の視界に

女の人と手を繋いで出てきた誠ちゃん。

その後ろからは、おじ様とおば様も。

「あちゃ…………。」

顔をしかめる春人さんから、全てが理解出来た。

………………………………………。

車から降り

「誠ちゃん、おじ様おば様…………こんばんは。」

にこやかな私に戸惑いながら

「………おう。」

「あらっ…………夏苗ちゃん。」

「おぉ!夏苗ちゃん…………。」とぎこちない3人。

「今、二泊三日の旅行から帰って来たの。
春人さんやお友達と一緒に行ったのよ!」

「ヘェ……………。」

「…………………あら~楽しそう……………。」

「………………………。」

生まれた時からのお付き合いの私に、誤魔化しが利くって思ってるの?

「そちらは?」

隠すつもりなら、ズバッと聞いちゃうもん!

「…………えっ!」

「………………あぁ。」

「…………えっと。」

口ごもる3人を無視して

「私、向かいの夏苗です。
もしかしたら、誠ちゃんの彼女さんですか?」と聞くと

「あぁ!貴女が夏苗ちゃんですか。
誠ちゃんの話しには必ずと言って良い程、出てくるんですよ。
可愛いくて仕方ないみたい。」

「おいっ!」

「良いじゃない、ホントの事なんだから。
私、昨日正式に婚約しました。
これからは、誠ちゃんと同じくらい仲良くなりたいです。
よろしくお願いします。」

明るく朗らかな微笑みで挨拶してくれる彼女は

ホントに誠ちゃんの隣がピッタリだった。

「誠ちゃんは、私の兄代わりだから
これからは、お姉ちゃんが出来るんだ!!嬉しい。
こちらこそ、よろしくお願いします。」

ニコニコ答える私の隣に、春人さんが立つ。

「挨拶はもう済んだ?
そろそろ俺も帰って休みたいから、車に乗ってくれる?
叔父さん、またゆっくり遊びに来ます。
それじゃ。」

強引に車に乗せると

我が家を通りすぎて、今来た道を進んでいく。
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