異世界平和はどうやら私の体重がカギのようです~転生王女のゆるゆる減量計画!~

「ねぇお姫様、本当言うとあなたが太っていようが痩せていようが、その見た目なんかはどうでもいいんだ。だってかつてのお姫様も、ぼろを纏って打ち捨てられた怪しげな風貌の男に、優しく微笑んで手を差し伸べているだろう? しかも大事なお菓子を、男に分けてやった」
 泣きやまない私に向かい、王子さまは謎の台詞を告げた。
「え?」
 今のは、どういう意味?
「だけどそうだな。お姫様が痩せて綺麗になったらきっと、もっともっと目が離せなくなってしまうんだろうな。美しいあなたから、一瞬たりと目が逸らせない。そうしてあなたを、誰の目からも隠したいと望んでしまう」
 そうこうしているうち、王子さまが光の粒子に包まれて、その輪郭がかすむ。
「ねぇ待って? さっきのあれは、どういう意味?」
 私は慌てて、王子さまの袖を引く。
「お姫様、あなたほどに魅力的な女性をほかに知らない」
「えっ!?」
 唐突な台詞にドキリとした。
「だから、自信を持って?」
 王子さまは私の問いかけには答えずに、優しいささやきだけを残して、ふうわりと消えた。

 これ以降、私が何度願っても、夢で王子さまと会うことはなかった——。





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