横から、こちらも涙で顔をクシャクシャにしたアイーダが、俺の腕の中のマリーナを覗き込む。
「アイーダ! 心配させてごめんね!」
「なにをおっしゃいますか! こうして姫様がご無事で、私、私っ……」
「アイーダぁ!」
 俺の腕からピョンっと脱したマリーナが、アイーダの腕に飛び込んだ。アイーダはびしょ濡れのマリーナを、躊躇なくその懐に抱きとめて、ふたりはひしと抱き合った。
 マリーナのぬくもりが消えたことを少しだけ残念に思いながらも、涙ながらに抱き合って笑うふたりの姿を見れば、胸が安堵で満たされる。
俺は心の中でマリーナを守ってくれた神と精霊に感謝を伝え、ふたりのもとをそっと離れた。
向かったのは自治団の面々のもとで、そこではちょうど、少女が自治団員から手当てを受けていた。
「よし嬢ちゃん、これで大丈夫だ」
「ありがと、おじちゃん」
 怪我は大きくはなかったようで、手当てが済んだ少女は自治団員にはにかんだ笑みで礼を言うと、兄のもとへと駆けていった。
 俺は、自治団員らに先の非礼を詫び、今度はきちんと騎士団長の紋章を示した上で、正式に少年少女の身柄を親もとに送り届けてもらえるよう依頼した。自治団のリーダーは恐縮しきりで、快くこれに応じてくれた。
手配した馬車の到着を待って、俺とマリーナ、アイーダの三人はテンツユ川を後にした。