翌日、マリーナはなかなか起きてこなかった。
「マリーナ朝だぞ? ……マリーナ?」
 返事のないことを訝しみ、衝立の向う側のマリーナの寝台を覗く。
 まぶたをつむり、健やかな寝息を立てるマリーナの姿は、起きているときよりもあどけない。
 俺はマリーナが寝入っているのを言い訳にして、衝動のままやわらかな髪をサラリとなでる。指の間をすべってゆく髪は、本来なら温度など持たないはずなのに、俺の手にたしかなぬくもりを伝える。
 もしマリーナを失っていたら……。想像だけで、俺という存在が足もとから崩れていくかのような恐怖を覚えた。
 こうしてマリーナが、俺の横で健やかな寝息を立てて眠っている。そのことが、苦しいくらいにうれしい。
 俺は、願いを聞き届けてくれたまだ見ぬ神と万物に宿る精霊に、改めて深い感謝を捧げた。……中でも、かつてマリーナからもらった宝。それに宿る精霊は、マリーナの救出に一際力を尽くしてくれたに違いなかった。
 ……マリーナ、かつての君が言った通り、精霊は俺の願いを聞き届けてくれた。