異世界平和はどうやら私の体重がカギのようです~転生王女のゆるゆる減量計画!~

「え? べつにここで食べていいわよ?」
 私にとって食事制限は常のこと。そこまで気を回してもらう必要は、まるでない。
 私は踵を返そうとする相田ちゃんを、慌てて呼び止めた。
「いえいえ! 茉里奈さんを前に弁当ふたつも貪れませんよ!! 茉里奈さんどうこうじゃなく、私の気がとがめますんで! それじゃ、午後にまたっ!」
 そう言うと、相田ちゃんは弁当ふたつを懐に抱え、いそいそとバックステージの対角へと去っていった。
 ……弁当をふたつ抱えているのは、最初から気づいてた。 だけどよもや、ふたつとも食べる気だったとは……。
 私は箸を片手に持ったまま、しばし呆然と固まった。
 これまで私は、一度だって人の食事をうらやんだことはない。だってそれらは、そもそも私の食べ物じゃない。そう考えれば、食べたいという欲求すら湧かなかった。
 ふと、目線をフロアの対角に向けた。
 するとちょうど、相田ちゃんが大きく開いた口に、パクリと唐揚げを頬張るのが見えた。 唐揚げをモグッと噛みしめた相田ちゃんが、ほんわぁ〜っと幸せそうに笑う。
 無意識に、ゴクリと唾をのんだ。 同時にこの瞬間、思った。
 ……唐揚げとは、いったいどれほどにおいしいのだろう?
 あぁ。私、唐揚げが、食べたい……。




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