スパークリング・ハニー
サッカーの強豪校から、いくつも推薦の話がもちかけられていて、まさに期待の星だったの。
だけど、お兄ちゃんは最終的にはそのすべてを蹴ったことになる。きっかけはどうであれ、そこからお菓子職人を目指していくことになったのだ。
「可能性を最初から切り捨てるのはよくない」
未来のことなんて誰にもわからないんだからさ、って。軽い口調、明るいトーンだけどずしんと重くひびく。
お兄ちゃんと歳はふたつしか変わらない。だけどそうとは思えないほど説得力がある。
「否定するのは簡単だけど、もったいないからさ。あと、光莉はもっと心のままに動いてもいいと思う」
「心のまま……」
「うん。それが、17歳になった妹へお兄様からの人生のアドバイスかな」
「もうっ!」
えっへん、と威張ったように胸を張って「お兄様」なんて自分で言ってのけたお兄ちゃんを軽く小突く。
うん、でも、ちゃんと心に留めておくよ。
17歳、まだ大人にはなれない。だけどもう子供のままじゃいられないから。