夕闇の時計店

-夕暮れ-

☆episode1☆
-夕暮れ-


日が沈む時間、閑散とした商店街を走る。

時間いつもより遅くなっちゃったなぁ。

高校で日直の仕事が長引いた為に、緋瀬さんに会う時間が削れてしまった。

何だかんだほぼ毎日会っていて、一緒に過ごしてから帰るというのが習慣になっていた。

商店街を抜けてすぐ、古い造りの時計店に着く。

呼吸を整えてから、商い中と書かれた札のかかった扉を開けて中に入る。

カランカラン……と来店を知らせる鐘が鳴った。

「あれ?」

違和感に首を傾げる。

いつもなら「いらっしゃい」と店の奥から店主である緋瀬さんの声がするのだが、それが一向にない。

「こんにちはー……緋瀬さーん?」

声を掛けても返事はなく、しーんとした部屋で時計の規則的な音だけが耳に届く。

どうしたんだろう……まさか奥で何かあったとか……?

出掛けているのだとしたら商い中の札は外していくだろうし。

強盗や怪我などいろいろな可能性を浮かべて胸騒ぎがした。
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