夕闇の時計店

-長い夜-

☆episode1☆
-長い夜-


「緋瀬さんっ…ねぇ、緋瀬さんってば!」

帰り道も、緋瀬さん宅に帰ってきても、顔を逸らして一言も話してくれない。

靴を脱ぐとスタスタと急ぎ足で廊下を歩いていってしまう。

「もうっ」

先回りして手を広げて通せんぼした。

「……っ」

「えっ……」

すぐに逸らされた緋瀬さんの顔は、真っ赤な上に涙目だった。

「どう……したんですか?」

「いや、その……悪かった。急に、妻だなんて言って……引いてないか?嫌になって……ないか?」

心配して泣きそうになってたから逸らしてたの!?

か……

「かわいい……」

「なっ……!衣月!」
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