紡ぐ〜夫婦純愛物語〜
野崎 優作に伝えられた結婚話。
「………はぁ?」
私は、父の言葉に怪訝な声をあげてしまった。

江戸………では無く、東京で薬種問屋を営む野崎屋の店主である父から「お前の結婚が決まった」と、何の前触れもなく言われたからだ。

「結婚とは、どういう事ですかお父さん。」
意味が分からず質問すると、父は薬の仕分けをしていた手を止めて私の方を振りいた。
 
「だから、お前の結婚が決まったんだよ。」

仕事以外の事は大雑把な父に聞いても無駄だと思った私は、隣にいた母に尋ねた。
 
「どう言う事ですか?結婚って、何処の?誰と?」
そう聞くと、母は何でもないかのように

「藤田屋の娘さんよ。ほら、呉服屋をしてらっしゃる藤田屋さん。豪商だし、大店は違えどこの辺までも噂はありますから、あなたも聞いたことくらいはあるでしょう?」
そう言って、作業を終えて私の目の前に座った父に、お茶を注いでいた。

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