君と僕のキセキ

3.繋がる声


 最初は、空耳だと思った。

 はっきりと聞こえるようになってからも、どこかの軽音楽サークルがゲリラライブでも始めたのかと考えた。

 しかし、それにしてはあまりにも近くから聞こえる。



 鼻歌は、音程をまったく外すことなく、メロディを奏で続けた。ノイズが混じっているが、綺麗な高音だとわかる。

 どこから聞こえているのだろう。



「あの……誰か、いるんですか?」

 僕はおそるおそる、問いかけてみる。

 すると、鼻歌がピタっと止まった。反応をうかがうが、何も起こらない。



 この小屋の中に隠れる場所はない。だとすれば、小屋の外だろうか。しかし、窓から顔を出してみても、人の姿は見えない。

 どこかにスピーカーが設置されていて、そこから聞こえたのだろうか。



 先ほどの僕の問いかけに反応して鼻歌が止まったことを考えると、こちらの声も聞こえている可能性が高い。



「どこにいるんですか?」

 次は、具体的な質問をぶつけてみる。



 僕の発言から数秒後。

〈どこって、公園のベンチですけど。あなたこそ、どこから話しかけているんですか?〉

 少しこもったような声が返ってきた。高さからして女性のようだ。



「公園? いや、ここはキャンパス内で、公園なんて……」

 僕がいる場所はキャンパスの端である。柵の外側にも、道路を挟んで工場が建っているだけだ。
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