彼のゴール、わたしの答え
わたしの揺れ動く心の話
「あー、ありがとう、気持ちは嬉しいんだけど……」

「俺は本気だよ。簡単には諦めないし、これからガンガンいくから」




困った。
いやはや困った。
彼のことはキライじゃない。
むしろ好きな部類だし、声をかけてもらって本当にうれしい。
でも、ダメだ。わたしはダメなのだ。

今年で34歳。
世間的には、お局様、なお年頃。
でもわたしは、結婚はしない。そう決めて生きてきた。

彼は職場で一番信頼できる後輩。といっても、同い年。わたしが高卒で入った職場に、院卒で入社したエリートくんである。

これで二人とも若ければ、とりあえず付き合うという選択肢もあったかもしれない。でも二人とも34歳だ。
うん、ムリムリ。

ガンガンこられても、無理だ。
早い内にこちらの手の内を見せて、諦めてもらうしかない。

うん。そうしよう。

善は急げで、翌日の昼休みに声をかけることにた。



「ねぇ、今日お昼空いてる?」

出勤したところをつかまえて声をかけると、明らかに動揺したような、上ずった声で返事があった。

「空いてる。てか、空ける」

「じゃ、あとでね」

ガンガンいくっていってたわりに、あんなかわいい反応するなんて。うれしそうな表情を見ると心苦しいが、仕方ない。
サクサク午前の仕事を終えて、チャイムと共に鞄を持つと、彼も立ち上がった。

何とはなしに同じ方向に向かい、一緒にエレベーターに乗り込む。私たちの職場は上層階だから、乗り込むときは空いているものの、だんだんと混んできた。さりげなくわたしをかばってくれるのがうれしい。うれしいけど、顔に出すわけにはいかない。

「二階でいいか」

「うん」

二階に到着したエレベーターから、一気に人が吐き出された。ここのオフィスビルは二階が駅に直結している。
二人きりで歩いているところを見られても、まぁそんなに困らないけれど、少し個人的な話をしないといけない。
駅の反対側にあるカフェレストランに向かうことにした。

「ちょっと歩くけどいい?」

「あぁ、俺はどこでも。こっち来るの久しぶりだし」

「あー、わかる。たいした距離じゃないけれど、便利なところで生活していると、行動範囲が狭まるよね」

「それな」

なんとはない話をしながらお店について、各々注文した。
さて、と。
どう切り出すか。

「でさ、お昼誘ったのはね」

「その前にさ、ちょっと俺の話聞いて」

わたしの言葉を遮って彼が話し出したのは、なぜわたしを好きになったのか、だった。
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