無愛想な同期の甘やかな恋情
魔法のアイテム
オフィス街の一等地に建つ、高層インテリジェントビル。
周りのビルより一際高く、空に向かって聳えるようなこのビルは、私が勤務する国内最大手化粧品メーカーの本社ビルだ。
このビルの二十五階にある大会議室で、現在新商品の企画会議が行われている。
会議が始まって三番目に、私、冴島美紅(さえじまみく)のプレゼンの順番が回ってきた。


入社七年目。
プレゼン席に着くと、これまで何度も経験した、自然と背筋がピンと伸びる緊張感が、全身を覆う。
一人当たりの持ち時間は二十分。
この二週間、他の仕事を抑えて、かかりっきりで準備を進めたプレゼンは、滞りなく進んだ。
とは言っても、最後に『ご清聴ありがとうございました』と頭を下げる瞬間の安堵感は、いつも変わらない。


私の発表の後、一時休憩となり、会議室に参集した三十人ほどの社員たちが、わらわらと立ち上がった。
トイレ休憩を取る人、コーヒーブレイクに向かう人、席に着いたまま自分のプレゼン準備を進める人……この休憩時間の使い方は、みんなそれぞれだけど。


「ふうっ」


プレゼン席から窓を背にしたテーブルに戻り、私はパイプ椅子に腰を下ろした。
口をすぼめて息を吐き、両腕を天井にグッと突き上げ、思いっきり伸びをする。
椅子に深く背を預け、喉を仰け反らせると、胸元に垂れていた栗色に染めたゆるふわの髪が、後ろにサラッと流れた。
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