無愛想な同期の甘やかな恋情
俺じゃ足りないなら
それから二週間――。
気付くと、世間では梅雨が明けていた。
天気予報では、連日、高気圧が日本列島を覆っている天気図が映し出され、ズラッと晴れマーク。
もう何日も雨が降っていない。


殺人的なギラギラの太陽光が地球に降り注ぎ、この惑星の温度を上昇させ続けている。
高層ビルが建ち並ぶ東京のオフィス街に、記録的な猛暑が襲いかかる中――。


「あ~つ~い……」


お昼休みの休憩時間。
混雑のピークは超えたものの、人でゴミゴミした社食で、私は篠崎君と向かい合って、沈み込んだ。


ちょうど、リサーチを兼ねて近場の販売コーナーを訪問してきた後だ。
エアコンが効いているとはいえ、集まった人の熱気で、それほど涼しく感じられない。
おかげで、身体に浮いた汗は完全には引いてくれない。


涼を求めてセレクトしたはずの冷やし中華も、生温い。
私は食欲が湧かず、空いている隣の席にトレーを避けた。


「美紅さん、半分も食べてないじゃないですか」


この暑さで、食欲を失うということはないんだろうか。
篠崎君の前にあるのは、がっつり胃に重いカツ丼だ。
しかも、ご飯は大盛りにしてもらってたのに、丼はほぼ空に近い状態になっている。
< 93 / 209 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop