見上げる空は、ただ蒼く
「かな君は、いいね。そんなに
優しいおばあちゃんがいて。」

そう言うと、かな君は少し
嬉しそうに笑って、それから
ものすごく真剣な表情になった。

彼の手が、私の右目の上にある
長い切り傷に触れる。

「......痛い?」

ささやくような声で尋ねられて
私は首を横にふった。

「今はもう、痛くないよ。」

すると、彼はその手を
違う場所に移動させる。

「じゃあ、ここは?」

かな君が触れていたのは、
私の心臓があるところだった。

「ゆいのちゃん、心は痛くない?」

「ちょっと、痛いかも......。」

気付けばまた泣いていた。

久しぶりに人の暖かい愛に触れて、
私の涙腺はもはやストッパーの
効かないくらいで、全くもって
意味を成していなかった。

「痛いの、痛いの、とんでいけ。」

かな君が私の頭を撫でて唱える。

かな君が傍にいる。

ただそれだけのことなのに、
不思議と心が落ち着いた。

窓から見上げた空は澄んでいる。
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