危ナイ隣人
2.

鋭イ眼光

「無事に工事が終わりました」



10月2週目の昼下がり、ソファーにもたれてテレビを見るナオくんに声をかける。

なに真剣に見てんだろと思ったら、競馬かよ。



「あ、そうなの? よかったな」


「うん。大家さんにもお礼言ってきた」



仕事が立て込んでてなかなか来てもらえなかったけど、ようやく業者の人が来てくれて、フローリングは新しくなった。


朝イチで始まった工事には大家さんが立ち会ってくれて、ひとまず支払いもしてくれた。

それから金額を提示されたんだけど……これがまぁ、予想を上回る安さで。

多く負担してくれるとはいえさすがにこれはダメだと思って食い下がってみたけれど、結局大家さんが受け入れてくれることはなかった。


するかしないかは自分で決めなさいって言葉に甘えて、先延ばしにしてしまっていたお父さん達への連絡も、さっき済ませた。

リフォーム代はお父さん達にもらっている生活費の中から賄うことができてしまったけれど、大家さんの慈悲を受けておきながら報告しないなんてずるいこと、できなかった。


お父さんに電話すると案の定こってり絞られちゃったけど、ちゃんと謝ったら許してくれた。

お父さんからも大家さんに連絡入れてくれるって。申し訳ないけど、よろしくお願いします。



「ってことで、404号室に戻ろうと思います。長い間、お世話になりました」


「いーえ。つっても、なんもしてねーけどな」
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