初恋をもう一度。【完】
Chapter1:初恋の人

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…………最悪だ。

6月にある合唱コンクールで、ピアノの伴奏をすることになってしまった。

目立つのは嫌いなのに。

それもこれも、あの松田《まつだ》さんが伴奏を拒んだからだ。

松田さんは小さい頃からピアノを習っていて、将来は音大に行ってピアニストになるんだとか言っている。

その目標は素敵だと思うけれど、「だから伴奏曲の練習なんてしてる暇はありません」というのは、かなりひどい言い草だと思う。

そんなこと言ったら、代わりに伴奏をやる羽目になった人間は、まるでものすごい暇人みたいだ。

じゃあ誰が伴奏やるのかって話になって、そうしたら松田さんが、こともあろうか「田崎《たさき》さんがピアノ弾けますよ」なんて言い出した。

待って、わたしだって暇人じゃない。

家に帰ったら、本を読んだりテレビを観たり……大した用じゃないけれど、いろいろあるもの。

松田さんはどういうつもりか知らないけれど、本当に迷惑。

それにわたしは、とても人前で披露なんてできる腕前ではないのだ。
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