魔法の鍵と隻眼の姫

龍の祠

段々と暗雲が立ち込め辺りは薄暗く、時折靡く風が生温く通り過ぎていく。

ここはあの渦巻く雲の領域。
ノアローズ王国はモリスデンが結界を張り黒雲に飲みこまれることはなく日も差すが災いまではねのけることが出来なく苦労していたが、ここら辺はその結界も及ばず、ところどころ土砂崩れや荒れ果てた村が点在していた。
そんな光景を目の当たりにして顔を曇らすミレイアだが、ラミンはこの光景を何度も見てきた。

「ここら辺はまだいい方だ。あの黒雲に近づけば近づくほど大地は荒れ人々の生気は無く、あってもそんな奴らは少しでもいい土地が欲しいと戦いに明け暮れる。そして余計に荒れ果てる。悪循環の出来上がりだ」

「そうなの…」

哀しげに周りを見るミレイアはもうすぐ目的地のアイオライトの町へ着くころだが未だにラミンの馬に一緒に乗っている。
体は既に回復しぴんぴんしてるのだが休憩の度にもう一人で乗れると言っても許されず、でもラミンの胸に背を預けるのが居心地良くて素直に従っていた。
ノニはいつの間にか居なくなっていたがきっと呼べばすぐに来てくれるだろう。

町の入口は家が転々としていたが中心地へ差し掛かると段々と賑わいを増してくる。
雲の影響があってもここの人々は活気がある。
ただ、喧騒の中に紛れる哀愁と憎悪がひしひしとミレイアに伝わる。

「おい、大丈夫か?」

「え、ええ…」

わずかに震えが胸に伝わりミレイアを気遣うラミン。
青い顔のミレイアに思わずチッと舌打ちしてしまう。
本当は人ごみの中にミレイアを連れて行くのは躊躇われたが町外れで聞いた情報によると結界が張ってある祠の場所を良く知る人物が町中の飲み屋に入り浸ってると聞き行かざるを得ない。
ミレイアを置いて一人で行くと言う手もあるが100mも離れると自分に雷が落ちてしまう。
周りの影響も考えると置いても行けない。

くそっあのジジイ、ホントに面倒な呪い掛けやがって!

ノニに結界を張ってもらうと言う手も考えたが、あれは魔物や捕食動物から自分を守るため匂いや音を遮断したり気配を消し寄せ付けないもので負の感情からミレイアを守ることはできないらしい。
便利でもあり不便でもある。
ノニが悪いわけではないがしゅんとするノニに思わず落胆する。

もうこうなったら早く件の人物を探し出して早く人ごみから脱出するしかない。
急ぎこの町唯一の飲み屋へと向かう。




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