偽物の恋をきみにあげる【完】
Chapter3
旅行から帰った夜、少しだけ早めの10時半くらいに、コタローくんからDMが来た。

『つーちゃん、こんばんは。もう家に帰って来た? 高知旅行は楽しめたかな?』

「うん、ただいま! すごく楽しかったよ♪」

コタローくんは大雅か否か。

結局答えが出せていないから、普通に返信した。

私は今、コタローくんが大雅であって欲しいと望んでいる。

いや、大雅じゃないと困る。

カラダを満たす大雅、心を満たすコタローくん。

まるで、互いが互いのないものを埋めるような、対極な存在。

どちらか片方では不完全で、私の中に2人が揃って初めて、恋として成立していたのだ。

なのに、大雅が私を「愛してる」と言った。

ずっと欲しくてたまらなかった大雅の心を、私はようやく手に入れて、もちろん幸せだ。

けれど、私には2人の恋人がいるのだ。

心をくれるのは……コタローくんの役目だったのに。

大雅が心までくれたら、それはもう、大雅が本物の恋人になってしまう。

でも、いくら大雅を手に入れたからって、今までずっと寄り添ってくれた、たくさんの好きをくれたコタローくんに、じゃあさよなら、なんて言えるわけがないのだ。

だから、コタローくんの正体が大雅じゃないと本当に困る。
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