溺れろ、乱れろ、そして欲しがれ

side東雲

手洗いと言って席を立ってから10分以上経つ。

なんかあったのか

仕方ない。ちょっと様子見に行くか。

トイレのあるデッキへ向かうと、ドアから少し離れたところで電話してる姿を見つけた。

なんだ。電話か。

そう思って戻ろうとした俺の耳に届いた名前。


"慶太"

誰だ、それ。

向き合うだとか、答えを出すとか、

告白でもされた口か。

声色、醸し出す雰囲気、恐らく見知った仲に違いない。

俺の知らない声色。

そんな風に笑うなよ。

愛しそうに目を和らげるなよ。

醜い嫉妬心が沸き上がる。

ガラにもねぇー。

何でだろう。

今までは器用にそつなくこなしてきた恋愛、嫉妬心や束縛なんて経験したこともない。

想う気持ちとは逆に得体の知れない不安がつきまとう。

無理矢理にでも鉄壁を壊すしか方法はない。

通話を終えたらしく、声をかけるとビクついて"怖い"なんて言われた。

まだまだ先は長そうだ。

受けてたとうじゃねーか。


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