時計は五時五分前を指していた。

 営業後の伝票処理を終え、無事に締め上げが完了した行内は、わきあいあいとした雰囲気に包まれていた。

(やっと帰れる……)

 公共料金の伝票を官公庁に送る手はずを整えた明日香は、ホッと息をつく。周りの行員たちもすぐに帰れるように片付けをはじめている。そのとき。

「宮原さん」

 支店長に手招きされてしまった。明日香は一瞬身構えるが、立ち止まっていてもどうしようもない。周りの同情を含んだ視線を受けつつ、支店長のデスクへ向かった。

「今回の投資信託の成績だけど、宮原さんの件数が、どうも少ないんだよ」

 他の行員は明日香を置き去りに、どんどん退行していく。明日香はうつむくしかなかった。

 友達も親戚も少ない明日香は、ローンや投資信託の件数を取ることができていない。

「すみません」

「ちゃんと電話とかしてる?」

 窓口業務でいっぱいいっぱいなのに、いつ電話営業なんてする暇があるというのか。

(今時電話営業なんて嫌がられるだけで、メリットなんてないのに……)

 現代人はみんなお金にシビアだ。何度かせっつかれて電話をしてみたこともあるが、客の対応は冷たいものだった。毎回心が折れる。

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