恋は小説よりも奇なり
Episode.3 編集と決意
受け取ってしまった――…。
誕生日の夜から今この瞬間までに奏はこの台詞を何度となく頭の中で繰り返した。
五十回ぐらいまでは覚えていても、その先となると流石に無駄だと気付いて忘れてしまう。
奏は午前中に宅配された箱へ目を向けた。
差出人は高津 大和。
中身は“絶版本シリーズ”という名の誕生日プレゼントだ。
大和からの誕生日プレゼントは幼稚園時の鉛筆三本から始まり、現在まで毎年必ず届く。
はずした物を贈ってこないところは流石というか、滅多に人を褒めたりしない奏もある意味感心していた。
その箱の上に乗っているのは、担当編集者 早見珠子が誕生日プレゼントと称して持ってきた山のような資料。
彼女ははずした物しかよこさない。
毎年同じパターンで、これはもはやプレゼントとは言わない。