大嫌いの裏側で恋をする
変化

石川美波、26歳。
ソフト開発、販売、その他メンテナンスサポートを手がける企業に勤める事務員だ。

もう、若くもない。 かと言って未来が描けているかといえばそうでもない。
昔のように5年後更には10年後をキラキラと思い描けなくなっていることは、確かな年頃。

「おいコラ、こっちに雪崩れてきてんだよ片付けろ」

苛立った声が聞こえ、つられるように私もムカムカしてくる。

「高瀬さんの机の上が汚すぎて気付かなかったや、ごめんなさーい!」
「喧嘩売ってんのか? あ?」
「売ってません、本気で忙しいんで黙って下さい! あなた様が叩きつけてきた注文書でしょ!!」

キーボードを激しく打ち続けながらピシャリと言い放つと、何か言いたげな息を吐いたあと彼は黙った。

サポート依頼の受注入力を終え、うーん、と身体を伸ばしながら一息つけたのはお昼前だ。
午前中は大体、怒涛の入力業務で終わる。
ふと、隣のデスクを見ればチクチク言ってた高瀬さんは外出したのか、見当たらない。
代わりに、文句を言われてた私のデスクは少し整頓されており、隣の彼のデスクも綺麗に整えられていた。
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