冷徹騎士団長の淑女教育
プロローグ
物心ついたころから、クレアは自分の容姿が嫌いだった。

肩上でバツンと切られた赤毛は、バサバサで女の子らしさの欠片もない。血の通っていない青白い肌に、痩せているせいで余計に大きく見える褐色の瞳。

手足は枝のように細く頼りない。ろくな食事を食べていないせいか背は低く、八歳なのに六歳程度に見られることすらある。




極めつけは、生まれつきのアザだ。

掌の付け根から手首まで広がるそのアザは、ちょうど50ビス銀貨と同じ大きさで、不気味な赤紫色をしていた。

召使いの子供たちはそのアザを目にするなり、「魔女の子、魔女の子」とクレアをはやし立てた。そのたびに、クレアは本当にそうなのかもしれない、と不安になるのだった。



魔女に捨てられた子だから、両親がいないのではないだろうか。

魔女の子だから、自分はこんなにも醜いのではないのだろうか。




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