冷徹騎士団長の淑女教育
第八章 最後の戯れ

「う…ん……」

窓の外の小鳥のさえずりが耳に心地よい。

うっすらと瞼を上げれば、見慣れた天井が視界に入った。

いつもの朝か、と思ったところで、クレアは跳ねるように上半身を起こした。



昨夜の記憶が、途中でぷつりと途切れている。

たしか、城の廊下でアイヴァンに会い、馬車に乗せられて――。

そこまで記憶を辿ったところで、クレアはみるみる顔を赤くした。

馬車の中で、アイヴァンに愛を告白したことを思い出したのだ。

だがアイヴァンからの答えは、ローズという女性と婚約したという残酷なものだった。

そのうえアイヴァンは、約束を破ってばかりのクレアを、これ以上この屋敷には置いておけないと言った。




昨日のショックが胸に蘇り、気持ちが沈んでいく。

そこで、ドアをノックする音が聞こえた。

「どうぞ」

レイチェルだろうと思い、クレアは落ち着いた声で返事をする。いつの間にかドレスから夜着に変わっているのも、眠っている間にレイチェルがしてくれたのだろう。

だが、ドアが開くとともに姿を現したのは、レイチェルではなくアイヴァンだった。
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