キミガ ウソヲ ツイタ
偽誕生日作戦
「俺、もうすぐ誕生日なんだ」

入社2年目の8月の蒸し暑い夜、仕事のあとに同期のみんなと飲みに行った帰り道で、俺は葉月に嘘をついた。

本当は4月生まれなのに、葉月と同じ8月生まれだと嘘をついて近付こうなんて、今になって考えてみると、なんて浅はかで馬鹿らしい作戦なんだろう。

俺が本当は4月生まれであることなんて、俺の営業事務を担当している葉月にはすぐバレそうなものなのに、葉月は俺の方をチラッと見て「へぇ、そうなんや」と呟いた。

「8月生まれってさ、子どもの頃は“誕生日おめでとう”って友達に言ってもらえないんだよな、夏休みだから」

その名前から葉月は8月生まれに違いないと勝手に決めつけ、8月生まれの友達が昔言っていたことを自分のことのようにもっともらしく言って共感を得ようとすると、意外なことに葉月は少し笑いながら首を横に振った。

「私は毎年、幼馴染みが家までプレゼント持って“おめでとう”て言いに来てくれてた。家近いし、私も毎年その子の誕生日にはプレゼント渡してたから。年中行事みたいなもんやねん」

大阪出身の葉月は、いつも懐かしそうに笑って地元の友達の話をする。

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