私はマリだけどなにか?
マリが言い終わらないうちにひとりの女が、いきなりマリの足を蹴ってきた。その蹴りはマリの太ももにヒットした。

「痛えな!何すんだこら!」

「チョット金貸してくんねぇかな?」

「なんでだよ?」

「なんで?なこと関係ねえ、また痛い目にあいたいのか?」

「お前ら、私が誰かわかってやってんのか?」

「青葉高の山田だろ?」

「おう、私の事知っててやってんだ・・・ということは誰かに頼まれたね!」

髪を赤く染めた体格のいい女が「そんなの関係ねぇ」

「そんなの関係ねえてか?お前は小島よしおか?オッパピーてか?超古いんだけど、笑える」

女は、マリの顔面めがけて殴りかかってきた。瞬間、マリは左手でそれを払い、右手で女の腹へ拳で突きを入れた。女はそのまま唸り声を出してうずくまった。

「う~~~っ」

「さぁ次はだれだ?かかってこいや!」拳法の構えをした。
マリは中国拳法黒帯で全国大会入賞の腕前。

「顔面は勘弁してやるから好きなだけかかってきな。ちっ、面倒だ。どうせなら3人いっぺんにきな!その倒れてる奴は無理なようだけど」

残り2人もマリの勢いに腰が退けていた。

もうひとりの女が「あんた、なんかやってるの?」

「んなもん関係あるかい? さぁきな! 金が必要なんだろ?さぁ、かかってきな!私を倒してから金、持っていきな、 
さっ来い!」

「もういい、帰んな。今日は許してやる」赤い髪の女が言った。

「はぁ?許してやるってか? おまえバッカじゃねえの?許して要らねえよ。とっととかかってきな!」

2人はもうひとりを抱えて過ぎ去ろうとした。

「おい待ちな!帰る前に誰に頼まれたか言ってみな」

「あんたんのとこの1年っぺで蛯子って知ってるかい?」

「蛯子?ああ何となく知ってるけど」

「その姉がうちの高校の3年なんだ。 そいつから話聞いて、それじゃあ私らがとっちめてやろうかっていうわけ。 頼まれた訳じゃないからね。姉やその妹には関係ねえから・・・」

マリは「分かったよ、じゃぁな」

3人は、うな垂れて歩き出した。

その時後ろからマリが「チョット待った。帰る前に私に金貸してくんない?」

小太り気味の女が「ちっ、いくらさ?」

「嘘だよ。あんた達そのままだと道歩いていてもしょぼくれてて格好つかないよ。私とそこの喫茶店でコーヒーでも飲まない?少し休んでいこうよ、どう?」

思わぬ言葉に3人は戸惑った。

「嫌かい?嫌ならいいけど」

4人は喫茶店に入った。

「そっちのあんた、腹は大丈夫かい?」

「えぇ?」瞬間その思わぬ気遣いにマリの優しさに触れたような気がした。

「あんた達、いつもあんな真似してるのかい?」

赤毛が「してねぇ~よ」

「そっかい。わたしを路地の陰に引き込む手順は馴れてたけどね」

3人は罰悪そうにマリから顔を背けた。

「その顔はやってるね。もうよしな、格好悪いじゃん、そんな事。今度私が見かけたら完璧に締め上げるから、分かった?」

「・・・・・」

「返事は?」

「はい・・・」三人は小声で言った。

威厳のある口調で「声が小さい!聞こえない!」

「はい!」

「しっかり聞いたからね、忘れるなよ」

マリが「チョット、トイレ行ってくる」と席を立った。

その間3人は小声で話し始めた。

マリが戻ってきた。

「あ~~スッキリした。出すもん出さねえと落ち着かないね」

赤毛の女が切り出した。

「マリさん、今、話し合ったんだけど、あたい達を弟子にしてくんない?」

「なんの?」

「マリさんの」

「なんで?」

「格好いいから」

「弟子ってことは何かを学びたいんだろ?だから何を?」

「なんでも」

「あのさっ、書道でも教える?」

3人はこけた。 こうしてマリの高校3年がはじまった。

END
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