弟はドラゴンで



夏休みがもう少しでやってくる。


暑さも増してきて、外ではセミも鳴きはじめていた。


そんなある日のこと。




「ねぇねぇ唯!変な噂知ってる!?」



唐突に聞いてきたのは、親友の凛。


学校で昼休みを凛と一緒に過ごしていた時のことだった。






凛は天然で可愛くて、いわゆる愛されキャラ。


しかも、いろんな情報の持ち主で、だいたい凛に聞けば学校のことはお手のもの。


学校の中のことなら、こと細かく知っている。


つまり、学校の中で流れている「噂」なども、よく知っているのだ。


どこでそんな噂やら他のことやら、聞き入れてくるんだか……。


そんな凛に、私は首をかしげて聞き返す。




「うわさ?」


「そう!私も最近聞いたんだけどね!この街、なんと!!おっそろしいバケモンが出るらしいよ〜!!」


「おっそろしい……バケモン?」


「そ!バケモン!」


「…………」




凛の発言で、しばらく私たちの間で沈黙の時間が流れる。


私は正直、「なに言ってんだ?」と思った。




「ちょっと!なんで反応ないわけ!?」


「いやいやいや、急にそんなこと言われても……反応しようにもできません。」


「ん〜まぁ……そうか!でもでも!ちゃんと続きがあるのよ!」


「う、うん」




凛が続ける。




「その“バケモン”ってのをね、見た人が何人もいるらしいんだ!しかもその“バケモン”、人間を襲うらしいの!」


「……へぇ?」


「あ!全く信じてない!」


「ん〜、なんか想像できない……」




私がまた首をかしげて言うと、凛の口から、信じられない情報が放たれた。




「あぁ!なんかね、翼が生えてるらしいよ。でも、見た目は人間とは変わりないんだって。」


「……え?」




……つば……さ?


見た目は、人間……?


それって……なんだか龍の感じと似てる……?


< 7 / 48 >

この作品をシェア

pagetop