恋は、秘密主義につき。
3-3
「・・・ま、ここにいてもしょうがねーか。送ってくよ、お嬢ちゃん」

ふう、と長い息を吐いた佐瀬さんが、体を揺らしておもむろに立ち上がる。

「あ、はい・・・っ」

慌ててバッグを手に、彼を追って店の外へ。
『ありがとうございましたぁ』、とのんびりしたマスターの声に送られて。


さっき兄さまと一緒に歩いてきたのとは反対方向に歩き出した、佐瀬さん。
横に並ぶのもちょっと変に思えて、半歩下がった後ろをついていく。

腕時計でそっと時間を確かめると4時ちょっと前。陽が落ちるのもずい分遅くなってきたから、まだ明るくて夕方っていう気もしない。
よく知らない人と、よく知らない街をこんな風に歩いているなんて。すごく不思議。
征士君と水族館に行った時より、どう言ったらいいか・・・。心臓が落ち着かなくて変な感じがします。

不安? 怖い? 愁兄さまのお友達なのに? 
解析不能な感傷が私の中で渦巻いて。・・・戸惑うばかり。
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