legal office(法律事務所)に恋の罠

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小池陽平、27歳。

T大学大学院理学系研究科の附属施設である植物園で植物の研究をしている助教。

お相手は、長谷川綾、23歳。

同じく植物園で受付事務として働いているらしい。

ウエディングゾーンを案内し終わった後、奏と和奏は社長室に戻って仕事をしていた。

透明のパーテションの向こうでは、法律関係の本に囲まれて和奏が文書を作成している。

その表情は真剣で、いつものアイアンフェイスに戻っていた。

小池が、和奏を理解するにあたっての最重要人物であることは間違いない。

何よりも、和奏の笑顔を取り戻したのは、彼との再会がきっかけに違いないのだ。

顧客データを閲覧しながら、奏は先程の和奏の可愛らしさを思い出していた。

幸せそうな二人を見て心から祝福をした和奏に、彼への未練はないのだろう。

しかし、

無敵のアイアンフェイスを崩したり、素直にさせるほど、小池は和奏の心の中に入り込んでいると言える。

その笑顔を隠さずに、動揺して爪づく位には、和奏は奏に心を開き始めているのだろうか?

奏は、内線でSakura Wedding に電話をかけた。

「桜坂です」

奏は、結婚式の打ち合わせ中である小池の話が終わったら、彼を足止めして社長室に連絡をするよう、簡潔に指示をして受話器を置いた。

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