legal office(法律事務所)に恋の罠

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「おはようございます」

「おはよう、和奏さん」

翌朝、社長室と弁護士執務室で顔を合わせた奏と和奏は、昨日と同じように事務的な挨拶をしていた。

和奏の部屋で朝食を済ませると、奏は自分専用のセミスイート・・・。

そう、和奏の隣の部屋

・・・に戻って行った。

奏の用意周到ぶりには、初めから驚かされっぱなしの和奏だったが、父親とも宇津井とも違う奏の強引さには、得も知れぬ安心感を得ていた。

奏は、決して和奏の嫌がることはしない。

その事は、この数日間で身をもって知ることができた。

小池のように壊れそうな儚さもない。

帆船の様な、しなやかな強さが奏にはある。

これからどんなに強い強風に晒されても、きっと難なく乗り越えていくのだろう。

そう信じさせてくれる貴重な男だった。

和奏は透明なパーテーション越しに、パソコンに向かう奏にチラッと目をやると、微笑みを浮かべた。

"私は私の仕事を誠実にこなしていこう。奏さんを信じていれば大丈夫"

そう、自分に言い聞かせると、再び、自分のパソコンに目を戻して、書類作成に取りかかった。

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