レンダー・ユアセルフ

/王子の心内






会場中の羨望を集めながら、この国の王女と近隣最大なる強国の王子が華麗に踊る。

互いの身体を寄せ合い、穏やかな微笑すら浮かべながら──実のところそんな事実は存在していなかったのだが──泰然自若として周囲の視線など意に介さない彼らだからこそ、遠巻きに見つめる人間たちの目を欺くことができたのだろう。








「貴方、自分のしたことがわかっているのかしら」









ぽつり、曇天からおちた滴のようにアリアナの口から核心がこぼれ落ちる。

鋭くジーファを見上げる彼女の眸は敵意に満ちており、内心ひやりとするものの彼はおくびにもそれを表には出そうとしない。

それは彼がそうして生きてきたからであり、彼の性格そのものだからだ。









「油断したきみにも非があるんじゃない?裸で眠るには、たいそう肌寒かったろうに」

「ッ、……それは貴方が!」

「僕が脱がしたから?その通りだよ、アリアナ」










ぞくりと彼女の背筋を悪寒にも似たなにかが走り抜ける。

アリアナの耳朶にその口許を寄せて低い音韻を流し込んだジーファ。彼女は自らの肌の粟立つ原因を嫌悪からくるものと信じて疑わなかったけれど、一概にそうとも言えない筈だった。




甘美なる熱が彼女自身を捉えていく。どんどんと上昇していく体温は、柔らかな頬にも確かな変化を与えていた。

瞬時に紅を帯びた頬桁を捉えるジーファの視線。くすりと囁くように投じられた艶笑も相俟って、カッと身体中に熱が迸る。









「まさか本当に……最後まで、」





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