月夜の砂漠に一つ星煌めく
そして、俺が生まれた日から、15年目の今日。

成人の儀が、厳かに行われた。

この日ばかりは、近隣の国からの客人を招き、宮殿も華やかなになる。

街の中も、お祝いムード一色になり、いつも以上の賑わいを見せた。

そして俺はと言うと、成人になったと言う理由だけで、見たこともない宝石に、首元を飾られ、高価な絹製のローブを着せられた。


「よくお似合いでございます。」

幼い頃、俺の面倒を見てくれていた女中が、涙を浮かべながら、微笑んでくれた。

「マリエフ前王妃様が、このお姿をご覧になったら、さぞかし、お喜びになられるでしょう。」

そう言って、今度は袖で涙を拭い始めた。

目出度い日だと言うのに、こんなに泣かれては、反って困るんだが、今日ばかりはお礼を言わなければならない。

なにせ、成人の儀を迎えられるのは、この女中のお陰でもあるのだから。

「そなたにも、礼を申さねばならぬ。」
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