【完】さつきあめ〜2nd〜

4月。美優が七色グループを卒業して、新しい道を歩む。
涼と綾乃が付き合い始めて、変わりようのない日常が少しずつ変化していって、七色グループに入って2度目の春を迎える。

3月のバースデーの売り上げは自分が思った以上で、過去最高だった。
双葉に移籍して、少しずつ単価が上がったのもあったかもしれないけど、自分にとっては最高額の売り上げだった。
…けれど、ゆりには届かなかった。
トップをひた走るとはどういう感情なのだろう。
ONEというお店で、わたしが入店してから、ゆりがナンバー1から落ちた事は一度も見た事がなかった。
不動のナンバー1。誰もが彼女に羨望の眼差しと、少しの嫉妬を含んで、いつでもわたしたちの前を歩いていた。

ONEのビルには、ひと際目立つ彼女の笑顔が街を見下ろしている。

「あぁ~っ!さくらちゃんおはよぉ!!」

今日は出勤前に、ナイト雑誌の撮影が入っていた。
巻頭グラビアを双葉が出すのは初めてらしい。ONEは中々メディアに積極的だが、双葉はお店的にメディア露出が少なかったらしい。けれどいつか由真が言っていたように、これからは若い層の露出を増やして、新規のお客さんも積極的に取っていきたいらしい。ONEに負けないお店にしたい。それは由真の夢でもある。
そこでわたしとレイがメインで今日は撮影が入っていた。

今日も元気いっぱい。わたしより早くスタジオに来ていたレイはわたしを見て嬉しそうに駆け寄ってきた。
ふんわりとしたシフォンのピンク色のドレス。明るい髪をくるくると巻いて、うさぎみたいに上でふたつに結んでいた。

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