私たちの六年目
晴れない心
混み合った蒸し暑い電車内、俺は時折フラつきながらも必死に足を踏ん張って立っていた。


金曜のこの時間は乗客の乗り降りが多いから、おそらく目的地までずっと立ちっぱなしになるだろう。


俺の職場から梨華の部屋までは、電車と徒歩で約1時間半。


仕事帰りに行くには、正直身体がきつい。


もう少し近ければ助かるのにと思った。




つい先日、梨華の両親と顔合わせをした。


梨華が言うには、ご両親は俺のことをとても気に入ってくれたそうだ。


確かに別れ際、「梨華をよろしくお願いします」と何度も頭を下げられた。


それは、とても喜ばしいことだ。


これから、長い付き合いになるのだから。


だけど……。


あの日以来、やけに気持ちが沈む。


そんな俺に、梨華はちっとも気づいていない。


毎日LINEで、式場をどこにするかとか、どんなドレスを着ようかとか、そんなことばかり話している。


正直、俺は今そんなことまで考えられない。


それよりも気になるのは……。


あの日、偶然会った菜穂のこと。


まさかあんなところで、菜穂に会うとは思っていなかった。


すごく嬉かった。


それはもう、泣きたいくらいに。


俺が落ち込んでいることを、菜穂はすぐに気づいてくれて。


やっぱり菜穂はすごいなと思った。
< 144 / 267 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop