私たちの六年目
それからの毎日。


俺は会社帰りになると、あの広場で少し足を止めていた。


帰り道なのもあるし。


どうしたって目に付いていた。


いつ行っても、菜穂は忙しそうに走り回っていて。


そんな菜穂を、俺は遠くからそっと見ていた。


仕事中の菜穂は、眩しいくらいに輝いている。


あんなに美しい人だったとは。


俺は、どうして気づいていなかったのかな。


金曜日のイベント当日、会場で何か食べて帰ろうかと思ったけど。


それは、やめておいた。


崎田君の姿が見えたから。


俺がいつまでも菜穂の周りをウロウロしていたら、崎田君は絶対良い顔をしないだろうから。


だけど、本当は……。


菜穂と少しでいいから話がしたかった……。


菜穂。


俺ね。


最近、生きている感じがしないんだ。


仕事にも、なんだか身が入らない。


ねぇ、菜穂。


俺の話を聞いて。


「秀哉は何も間違ってないよ」って。


そう言って笑って欲しい。


時折、菜穂と楽しそうに話している崎田君を見ながら。


俺は内心、それがうらやましくてどうしようもなかった。
< 160 / 267 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop